タヒチアンダンス(オリタヒチ)には、力強いドラムに合わせて踊るオテアや、歌や物語を身体で表現するアパリマなど、さまざまな踊りがあります。
その中でも、ゆったりとした音楽と滑らかな身体の動きが印象的なのがメフラ(Mehura)です。
華やかなロングドレスを身にまとった女性たちが優雅に踊る姿を思い浮かべる方も多いかもしれません。
しかし、「メフラとアパリマは何が違うの?」「昔からメフラという踊りがあったの?」と聞かれると、少し説明が難しい踊りでもあります。
実はメフラはアパリマと深い関係を持っており、現在使われている「Mehura」という名称が競技カテゴリーとして定着していった背景には、タヒチで開催されている伝統舞踊大会の歴史も関係しています。
この記事では、メフラとはどのような踊りなのか、その特徴や音楽、衣装、アパリマとの関係、そして現在の「Mehura」という名称が使われるようになった経緯まで、初心者向けに紹介します。
メフラ(Mehura)とは?
メフラは、ゆったりとしたリズムに合わせて踊られるアパリマの一形態です。
フランス文化省の無形文化遺産資料では、アパリマには「ʻaparima vāvā」「ʻaparima hīmene」「mehura」という3つの形態があると整理されており、メフラはゆっくりとしたアパリマとして紹介されています。
そのため、アパリマとメフラをまったく別の種類の踊りと考えるよりも、メフラはアパリマの中から発展したひとつの形態と考えると分かりやすいでしょう。
歌詞の内容を手や身体、表情によって表現するという点も、アパリマと共通しています。
一方で、メフラには特徴的なリズムやテンポがあり、現在ではタヒチで開催される伝統舞踊の大会「Hura Tapairu(フラ・タパイル)」などで、独立した競技カテゴリーとして扱われています。
メフラの特徴
ゆったりとしたリズムと滑らかな動き
メフラを見たときにまず印象に残るのが、ゆったりとした音楽と滑らかな身体の動きです。
オテアのように速いタヒチアンドラムのリズムに合わせて力強く踊るのではなく、音楽の流れを感じながら、手や腕、腰、身体の向き、視線などを使って表現していきます。
動きがゆっくりだからといって、簡単な踊りというわけではありません。
ゆっくりとした動きの中では、身体のコントロールや姿勢、手の軌道なども見えやすくなります。
またアパリマの一形態であるため、ただ美しく動くだけではなく、歌詞や作品のテーマを身体で伝えることも大切です。
歌詞や物語を身体で表現する
メフラでも、アパリマと同じように歌詞と身体表現の関係が重要です。
手や腕の動きだけでなく、視線や表情、身体の向きなどを組み合わせながら、歌われている情景や感情を観客へ伝えていきます。
そのため、メフラを踊るときにも、
「この歌では何が歌われているのか」
を理解することが大切です。
メフラの音楽
メフラでは、歌やメロディーを伴った音楽が使われます。
ギターやウクレレなどの弦楽器も使われ、タヒチアンドラムを中心としたオテアとは大きく異なる音楽を楽しむことができます。
ただし、「メフラ=ゆっくりした曲なら何でもよい」わけではありません。
現在のHura Tapairuでは、Mehuraカテゴリーの演技はハワイアン・フラに相当するリズムを基準としながら、ボサ、ルンバ、ボレロ、スウィング、hula kaina、hula tahitiなどのリズムも認められています。
2024年の大会規定では、テンポも100〜130BPMと定められています。
そのため、メフラには比較的穏やかな印象がありながらも、曲によってリズムや雰囲気にはさまざまな違いがあります。
「メフラらしさ」を知るためには、踊りだけでなく音楽にも耳を向けてみるとよいでしょう。
メフラの衣装
メフラでは、踊りとともに衣装も大きな魅力のひとつです。
特に女性のメフラでは、布を使ったロングドレスを身につけて踊る姿がよく見られます。
身体の動きに合わせて長い布が揺れることで、滑らかな踊りの印象がさらに引き立ちます。
また、作品のテーマに合わせて色やデザイン、装飾などが工夫されることもあります。
男性が参加する場合には、シャツやパンツ、パレオなどが用いられることもあり、女性とは異なる衣装と身体表現を見ることができます。
アパリマとメフラの違いは?
アパリマとメフラは、まったく別の踊りというわけではありません。
メフラはアパリマの一形態として位置づけられています。
どちらも歌詞の内容を手や身体、表情によって表現するという共通点があります。
そのうえでメフラは、ゆったりとした特徴的なリズムやテンポを持つスタイルとして発展し、現在では大会でも独立したカテゴリーとして扱われています。
そのため、
アパリマ=歌や物語を身体で表現する踊り
メフラ=そのアパリマの中でも、特徴的なリズムやテンポで踊られる形態
と考えると、初心者の方にも両者の関係が分かりやすいでしょう。
単純に「アパリマは速く、メフラは遅い」と区別するのではなく、メフラはアパリマとつながりを持つ踊りであることを知っておくことが大切です。
「Mehura」という名前はいつから使われている?
現在では日本のタヒチアンダンス大会でも「メフラ」という名前を目にすることがあります。
しかし、現在の競技カテゴリーとしての「Mehura」という名称が広く使われるようになった背景には、タヒチの大会Hura Tapairu(フラ・タパイル)があります。
Hura Tapairuは2004年に始まったタヒチの伝統舞踊大会です。
大会では当初、現在のMehuraにあたるカテゴリーを「Hula」と呼んでいました。
しかし「Hula」はハワイ語由来の名称であり、混同を招くことから、タヒチ語アカデミー(Fare Vānaʻa)の提案を受け、2012年の第8回Hura Tapairuから「Mehura」へ名称が変更されました。
当時のタヒチの文化誌では、Mehuraについて「4拍子で踊られる非常にゆっくりとしたアパリマ」と説明されています。
重要なのは、2012年に新しい踊りとしてメフラが突然誕生したわけではないということです。
それまで「Hula」と呼ばれていた競技カテゴリーの名称が「Mehura」に変更され、その後この名称が定着していった、と理解するのがより正確です。
Hura Tapairuの歴代記録を見ても、2011年までは「Hula」、2012年からは「Mehura」というカテゴリー名が確認できます。
実際のメフラを見てみよう
文章だけでは、メフラ独特の音楽や身体表現をすべて伝えることは難しいでしょう。
実際のメフラを見るときには、
- 音楽のリズムやテンポ
- 歌詞と手の動きの関係
- 滑らかな身体の使い方
- ダンサーの視線や表情
- 衣装の動き
- グループ全体の構成
などに注目してみてください。
こちらはHura Tapairu 2024のMehura部門で1位を獲得したMANOHIVAの演技です。
そして、アパリマの演技と見比べてみるのもおすすめです。
共通している部分と異なる部分の両方に注目すると、「メフラはアパリマとどのような関係にあるのか」が、文章だけで読むよりも分かりやすくなるでしょう。
まとめ
メフラ(Mehura)は、ゆったりとしたリズムに合わせて踊られるアパリマの一形態です。
歌詞や物語を手や身体、表情によって伝えるというアパリマの特徴を持ちながら、特徴的なリズムやテンポ、滑らかな身体表現などによって独自の魅力を持っています。
また、現在の「Mehura」という競技カテゴリー名は、Hura Tapairuでそれまで「Hula」と呼ばれていたカテゴリーが、タヒチ語アカデミーの提案を受けて2012年に改称されたことをきっかけに定着していきました。
そのため、メフラを単に「ゆっくりしたタヒチアンダンス」と捉えるのではなく、アパリマとの関係や音楽、そして現在のカテゴリーが成立してきた背景まで知ることで、その特徴がより分かりやすくなります。
次にメフラを見る機会があれば、衣装や優雅な動きだけでなく、歌詞と身体表現、そして音楽のリズムにもぜひ注目してみてください。
アパリマについて詳しく知りたい方はこちら。
→ アパリマ(’Aparima)とは?歌や物語を表現するタヒチアンダンスを解説
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